読んだ本の感想や紹介

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アルスラーン戦記1 王都炎上 第2章

第2章 バシュル山

<感想>
ナルサス紹介、アンドラゴラス登極前後の状況説明の章。戦における軍師、国政における宰相の力量を感じさせるが、それ以上に善き国造りに情熱を持っているのが見えます。山荘でのナルサスカーラーンの部下とのやり取りも痛快。


<名言>
ナルサス「無関心は悪の温床であって、善の味方ではない」

アルスラーン「ルシタニアの高名な画家に死に顔を描かれるより、ナルサスに生きた姿を描いてもらいたい」
ナルサス「軍の指揮者たるものは、もっとも弱い兵士を基準として勝てる戦法を考えなくてはならない。一国の王者ともなれば、もっとも無能な指揮者でも敵軍に負けないよう、あるいは戦わずともよいよう方策をめぐらすべき」

ナルサス「臣下には主君を捨てる権利がある。」

 

<あらすじ>
 パルス暦315年、アトロパテネの会戦の5年前。パルスと東方国境を接する三国、トゥラーン、チュルク、シンドゥラが同盟を結び、侵入。一片の流言で同盟を同士討ちに導き、内部崩壊させた人物がダイラム地方の領主ナルサスアンドラゴラス王もナルサスの智略と識見を認め、宮廷書記官に任命。2年が過ぎた頃、アンドラゴラス王の治世にゆるみが生じ始め、ナルサスは数々の改革案を提出するも認められない。神官の不正を暴いたナルサスは神官から刺客を差し向けられ、これを機会に王に置き手紙をして宮廷を出奔。置き手紙を見たアンドラゴラス王は激怒するが、ヴァフリーズになだめられ、またナルサスもダイラムの領地を返上し、バシュル山の山荘にひきこもったので、王も怒りをおさめた。以降、ナルサスは山荘にて絵を描いたり、異国の書を読んだりして平和に暮らしている。

  絵が好きなナルサスだが、ダリューンに言わせると「知らないことはないが、たった一つ、自分の絵の技量についてだけは例外。」ナルサスの元には、両親を奴隷(ゴラーム)から自由民(アザート)に解放してもらったエラムが両親の遺言に従い、仕えている。

 ナルサスの元を訪れるアルスラーンダリューンダリューン王太子の為に、智略に優れ、傑出した剣士でもあるナルサスの力を求めるが、ナルサスはすげなく断る。ルシタニア軍に敗れたことを聴いたナルサスは、今後ルシタニア軍がとるであろう方策について語る。その声は熱を帯びており、隠者のそれではない。アルスラーンナルサスに「王に嫌われた者同士」として協力を求めるが、やはり断られる。嫌われ者同士と話す王太子ナルサスは関心をひかれ始める。

  アルスラーンが寝台に入った頃、ダリューンナルサスは、王が隔意を示す王太子、王が甘い王妃タハミーネについて思いを馳せる。

パルス暦301年、名君であった国王ゴダルゼス二世が没し、当時27歳の長男オスロエスが即位し、次男アンドラゴラスは大将軍となる。303年、パルスとシンドゥラの間にあるパダフシャーン公国内にて、ゴダルゼス王崩御がきっかけとなり、親パルス派から新シンドゥラ派が有力となる。すかさず、大将アンドラゴラス副将ヴァフリーズのパルス軍がパダフシャーン公国を攻め、パダフシャーン公カユーマルスを自殺に追い込み、パダフシャーンをパルスに併合する。オスロエスは、アンドラゴラスがカユーマルスの妃タハミーネを求めるのを許可するが、タハミーネを一目見て、自身の妻にしようとする。廷臣の助言でオスロエスも結婚を強行せず、タハミーネは王宮の客人という奇妙な立場として扱われる。兄と弟の対立が始まり、深まっていくなか、オスロエスが落馬し、危篤状態となる。オスロエスの長男は11歳で未だ王太子として立てられてはおらず、東西に強大な敵国がいる状況である。オスロエス崩御アンドラゴラスの登極が発表され、様々な憶測や噂が流れるが、王宮の一部で火災が起こり、オスロエスの長子が焼死。アンドラゴラスヴァフリーズを大将軍に任命し、タハミーネを王妃として迎える。その翌年、アルスラーンが誕生し、アトロパテネの会戦まで、アンドラゴラスの治世はゆるがぬものに見えた。

  翌朝、アトロパテネでアンドラゴラスを裏切ったカーラーンの部下がナルサスの山荘に押し入る。カーラーンの城の近くを通って逃げてきたダリューンの策略であった。カーラーンの部下もナルサスを誘うが、ナルサスはこちらも断る。カーラーンの部下からヴァフリーズが亡くなったことを聞いたダリューンはショックを受ける。

どちらにしろ、山荘を出るしかなくなったナルサスに、アルスラーンは自身が王となった暁には「宮廷画家」の地位を提案する。これにはさすがのナルサスも驚くが、君主としての度量も感じ、アルスラーンと共に歩むことを承諾する。ナルサスエラムを港町ギランの知人に預けようと考えるが、エラムは頑として受け付けない。かくして一行は4人となる。ナルサスは、山が包囲されていることを予想し、山荘からすぐに下りず、洞窟に潜むこととする。

 

<登場人物>(登場順。名前のみの登場は後述。)
王太子アルスラーン 14歳。第18代国王アンドラゴラスの王子。
ダリューン 27歳 パルス最強の武将。ヴァフリーズの甥。
エラム ナルサスの侍童(レータク)。

ナルサス ダイラムの旧領主。宮廷の書記官だったが出奔し、隠棲している。

(名前のみ)

アンドラゴラス王 タハミーネ王妃には甘いが、王太子には隔意を示す。

         ゴダルゼス2世の次男。長男オスロエス在位中は大将軍。

大将軍ヴァフリーズ パダフシャーンを攻めた時は副将。

テオス ダイラム地方の領主。アンドラゴラス王の古い友人。ナルサスの父。

    パルス暦315年、王の要請に応じて出陣する直前に館の階段から落ち、死亡。

タハミーネ王妃 パダフシャーン宰相婚約者だったが、パダフシャーン公が妃とする。

カユーマルス パダフシャーン公。パルス暦303年、パルス大使を追放し、シンドゥラ

       と結んだ為、パルス軍に攻め落とされ、首都ヘルマンドス城から身投げ

       する。

ゴダルゼス2世 パルス暦301年61歳で没す。アンドラゴラスの父。

オスロエス ゴダルゼス2世の長男。

カーラーン 部下がパルスの大将軍(エーラーン)と呼ぶ。